1998年ベルギー

お題「初めて一人旅をします。一人旅でよかった場所、一人旅初心者におすすめの旅行先を教えてください。」

私が、海外旅行で初めて一人旅をしたのは、ベルギーでした。

楽器を作ってくれたブリュッセルバロックフルートメーカーに会うことが目的の一つでした。

ベルギーはフランス語、フラマン語、あと確か、一部ドイツ語の国です。ですが多くのの人は英語が使えて、外国人と英語でコミュニケーションするのが上手だという印象があります。ですから私のようにカタコト英語でも、快適に一人旅ができるように思いました。私が旅をしたのは、ブリュッセル、ゲント、ブリュージュアントワープだけですので、南部はわかりませんが。

私の旅は長野オリンピック開催中の1998年の冬でした。このことは別のブログに書きましたが、それより少し詳しいことをガンバの先生へのご報告として書いたものの1日目を掲載します。

 

O先生、


 1年ほど前からベルギーへ行く事を計画していましたことは、先生に夏の終わりにお会いしたとき、すこしお話ししました。ついにこの2月21日から3月6日までのあいだ、行ってきました。おもいがけず独り旅となり、また、3月で勤め先を解雇されることなどもあり、この旅の準備期間はとても気の重い時間でした。
  なぜ今旅にでるのか、なんどもなんども自問自答しまた。フルートメーカーには、会ってみたかった。旅に出てじっくり自分自身に向き合って、これからのことを考えたいとも思いました。少しは自分の何かが変わるかもしれない、そんな期待もありました。
そんな状態の中、なんとかかんとか実行できました。2月1日のS.V.E.の演奏会の頃にはこの旅行は決まっていましたが、それでも迷いはあって、いっそのことキャンセルしてしまおうか、といつも考えていました。そんなとき、演奏会の先生のプログラムノートを拝読しまして勇気付けられました。帰ったら先生に手紙を出そう、と強く思いました。

「さて、私たちは独りで旅に出るとします。そこで歴史的な建築や美術品に接し、それと面と向い、感動して、その感動を友に伝えようと手紙を書きます。そこが重要だとおもいます。何故ならば、その伝えるという行為が自分を成長させ、友を成長させるからです。」(SVE第8回演奏会プログラムノートから抜粋)

 計画のとき、金銭的理由と、独り旅でしかできない体験をと考えて、何泊かをユース・ホステルで過ごそうとしました。日本からはじめの2泊と最後の1泊を予約しました。この予約は、飛行機の到着が遅れたため、無駄になってしまうのですが。
 
1998年の冬。3年ぶりのヨーロッパ。

2月21日
 予約していたホステルに空港から電話したら、18時を過ぎたのでキャンセルになったと言うことでした。到着したのが土曜日だったからか、安いホテルを探しましたがブリュセルではみつからないので計画を変更して、はじめにアントワープに行くことにしました。首都よりは容易にホテルが見つかるだろうと考えたわけです。初めてのベルギーの夜で途方に暮れそうになりました。ブリュセル北駅に行き、公衆電話から『地球の歩き方』で駅の近くのホテルに電話して泊まれる宿をみつけたときは、涙が出そうなくらいうれしかったのです。
 ホッとしてアントワープ行きの時刻を見たら、ついさっき出たばかり。つぎは1時間後でした。なんだかうまく行きません。仕方ないので、駅の中でホットドックを買い、駅をぶらぶらしながらパクつきました。
 北駅は何だか閑散としていて、不気味なくらいでした。インフォメーション前のベンチでは子供がおかあさんとすわっていて、なにやら大きな声で親にはなしているのが高い天井にこだましていました。
 駅前もタクシーが数台客待ちしているだけで、人はまばらです。しかも、あたりにはあまり照明がなく、寒々していました。
 定時の10分前にホームに行くとすぐに、アントワープ行きの電車が入ってきました。時間より早いので、運転手に確認してから乗り込みました。やはり、時間より早くでました。そこでヒゲの車掌にも確認したのですが間違っていない様なので、一応安心しました。しかしすぐ、分かりました。ぼくが乗ろうとしたのは急行でしたが、乗ったのは鈍行なのでした。

「なんか、はじめからうまく行かないなぁ」

と、すこし気落ちしました。でもともかく目的地に行けるので良しとするか、と考えることにしました。
 そとは真っ暗で、みえるのは窓のガラスに写った自分の姿です。

 途中の駅で停車中、肩をトントンたたかれました。見上げるとヒゲの車掌さんでした。
「乗り換えたほうが、早いよ。」
はじめに乗ろうとしていた急行が向かいのホームに追い付いていたのです。もちろん乗り換えました。
 なんて親切なのでしょう!だんだん、うまく事がはこびそうな気がしてきました。

アントワープには、10時近くに到着でした。3年まえに1泊した街、なんの因果か同じように最初の夜はここになってしまいました。初めて訪れた時のほうが、すんなりたどり着けたのに・・・(前回は、空港から、直行バスでたどり着いたのでした。)

 街はほとんど変わりありませんでした。またそれがいっそう孤独感を募らせました。

 ホテルはすぐ見つかり、チェックイン。
 レセプションで、先ほど電話した○○だ、と言うと金髪のやせたおばさんが、
 「表?それとも裏の部屋にしますか。」
 「エート・・どう、ちがうの?」
 「表側は、道路に面しているから、うるさいです。裏の方が静かです。」
 「じゃ、裏。静かな方がいいからね。」
 「わかりました。」紙に、書き込みをしながら彼女は、あ、思い出した、と言う素振りで、
 「裏の部屋はシャワーだけだけど、表はバスタブもあるけど、どうします?」
 「そうなのですか。ウーン。」ぼくが迷っていると
 「バスタブがあるかないかって、そんなに重要?」
なんて言われてしまいました。日本人だなぁ。
 「表はそんなにうるさいの?」
 「まあ、部屋は4階(日本式には5階)だから、そんなにでもないですよ。」
 「じゃぁ、表にします。」
 こうして、部屋が決まりました。考えたら、このあとバスタブを使えることなどないかもしれないし、3年前にこのおなじ並びの別のホテルに泊まった時は裏の部屋で、窓から景色が見られずがっかりした経験がありました。この選択は、間違いではないと思いました。
 料金は高いけど、ツインの部屋なのでゆったりできました。(でも、部屋を見たときはシングルだと思っていたので、ベットが二つ並んでいるにびっくりしてレセプションで確認しました。)
 外もそんなにうるさくはありませんでした。むしろ、となり部屋でかけている長野オリンピックのテレビ中継ほうが、気になるくらいでした。照明がオレンジ色の間接照明なので部屋の内部はとても暗く、「ああ、ヨーロッパにきたんだ、」としみじみ思いました。

 荷物を部屋においてすぐ、そとに何か食べに行きました。イタリアンレストランが安かったので入りました。ピザとビールを注文しました。フランスパンとガーリッツクバター、オリーブの実がはじめにでたので、パンはぜんぶ食べてしまったのですが、ピザを見て後悔しました。大きくてとても1人では食べられません。旅の初日でもあるからか、少し緊張していたようです。3分の1しか食べられませんでした。

以上が、昔書いたものの一部です。この後2週間の一人旅を満喫しました。普段ほとんど旅行しない私にとってこのベルギー旅行は今でもとても大切な経験で、この時間があったから今まで何とか生きてこれた、と思っています。

また、行きたいです。